ブルーベリーの概要


  •  概要
  • ブルーベリー(スノキ属)は、世界の酸性土壌の不毛地で優先的に群落をつくって生き延びてきた植物で、鳥や野生動物のよって種子が運ばれ新たな不毛地に群落が形成され、自然交雑が繰り返され種が分化した。
  • 世界には、400種のスノキ属植物が広く分布しており多くが野生状態で太古から人間に利用されてきた。

  •  諸外国では
  • アメリカのブルーベリー自生地には多くの野生種やブルーベリーに近似したスノキ属植物が自生している。
  • ヨーロッパでは東欧諸国やロシアを中心に、スノキ属の野生種(V.myrtllus)がアメリカ・カナダ・のローブッシュブルーベリーと同様に栽培されている。

  •  日本では
  • 日本にも多くのスノキ属が自生しており、浅間山のような火山の周辺(酸性地)に自生するクロマメノキ(浅間ベリー)の果実は古くから利用されてきた。
  • またナツハゼ・クロウスゴ・シャシャンボなどが同じスノキ属植物である。


   ブルーベリー利用歴 


  •  北アメリカ大陸では、先住のインディアンが野生ブルーベリーを数千年もの間、果実を生食したり、乾燥して冬の保存食として採集利用した。 また、先住インディアンは、ブルーベリーを女性が出産するときの精神安定剤としてブルーベリー茶(葉や根を煎じ)を薬として用いるなど、多様な方法で生活の必需品として利用してきた。 これら先住インディアンの伝統的な利用法は現代に伝わっている。 
  •  17世紀イギリスからアメリカへの初期入植者がアメリカ北東部で居住を始めたが、この地域の気象は厳しく持参した多くの農作物は育たず、多くの人が死亡した。 残った入植者を救ったのはWanpanoag族の先住インディアンで、とうもろこしの育て方や野生植物の採取と保存法を教えてもらった、そのなかでも重要な植物だったのが広範に自生しているブルーベリーの果実であり、果実の採取・乾燥・加工・貯蔵の方法などを学んだ入植者は、ブルーベリーのおかげで冬の飢えをしのぐことができた。 また、入植者は労働の疲れを癒すために、ブルーベリー茶(葉や根を煎じ)を愛飲した。 近年ブルーベリー茶には、血液の清浄作用があることが明らかになった。


   

   ブルーベリー産業


  •  1916年にアメリカ・ニュージャージー州ホワイツボックのホワイト女史の園地からコビル博士の育てたノーザン(北部)ハイブッシュブルーベリー系のブルーベリーの実生果実が出荷されたのがブルーベリー産業の始まり。
  •  近年、ヨーロッパ・オセニア・南アメリカ・アジアでも高品質で気象適応性の優れる品種の育種栽培に取り組んでおり、ブルーベリー産業は世界中に拡大している。


   諸外国のブルーベリー栽培動向


  •  ヨーロッパでは、東欧諸国を中心に野生のブルーベリー(V.myrtillus)が採集利用されていたが、近年になってドイツ・オーストリア・デンマークなどでは、アメリカ種のブルーベリー育種栽培も始まり、アイルランド・イタリア・スコットランド・ユーゴスラビア・フィンランド・ポートランドにも広がっている。
  •  南半球でも拡大中で、チリやオーストラリア・ニュージーランドでもサザン(南部)ハイブッシュブルーベリー系の高品質で気象適応性の優れるブルーベリーが育種栽培されている。
  •  アジアでは、韓国と中国の山東省・吉林省・遼寧省などで育種栽培が始まり、中国のブルーベリー栽培は歴史が浅いが、生果が日本市場に空輸されてきている。


   ブルーベリー来歴と経済栽培


  •  日本のブルーベリーの導入は、1951年(昭和26年)農林省北海道農試(当時)により、アメリカ・マサチューセッツ農試からハイブシュブルーベリー系の数品種を導入したのが最初である。
  •  1962年(昭和37年)にラビットアイブルーベリー系品種が農林省特産科や、そのほかの公的機関によってアメリカ・ジョージア州などから導入し栽培適応試験が行われ、1968年(昭和43年)に東京小平市で経済栽培が始まった。
  •  1971年(昭和46年)に長野県でノーザン(北部)ハイブッシュブルーベリー系品種の経済栽培が始まった。
  •  1980年代には、水田転作や中山間地向けの推奨作物として群馬県・新潟県・山梨県・宮城県など栽培に適した高冷地を中心に各地で栽培生産されるようになった。
  •  1978年(昭和53年)にローブッシュブルーベリーが恵泉女学園短大により導入された。


   日本のブルーベリーの取り組み


  •  我が国日本では、1900年(明治33年)頃から現在アメリカで育成されている、ノーザン(北部)ハイブッシュブルーベリー系・サザン(南部)ハイブッシュブルーベリー系・ラビットアイブルーベリー系の各品種の導入と経済栽培、ニュージーランドやオーストラリアで育成された品種の導入と経済栽培が行われているが、1998年(平成10年)に日本で初めてのブールーベリー育種栽培品種『おおつぶ星』が発表され、翌年1999年(平成11年)『あまつぶ星』が発表、さらに2004年(平成16年)『はやばや星』が発表されている。
  •  この3品種ともノーザン(北部)ハイブッシュブルーベリー系のブルーベリーで群馬県農業総合試験場北部分場(群馬県沼田市)育成により日本のブルーベリー育種経済栽培に新しいページを開いた。

 石川駿二・小池洋男 両氏共著参考