西洋ナシの原産と来歴


  •  西洋ナシの種子は人間や動物の消化管を通り抜けても発芽するため、人間や動物による種子の移動により、西洋ナシ産地は広まったとされ、ヨーロッパ(中部から南東部にかけて)、コーカサス、小アジア、ペルシア北部まで、西洋ナシの野生種が原生していたものと思われ、栽培は有史以前から行われたと思われます。
  •  古代ギリシアでは、ナシは「神へのみつぎもの」であったといわれることから、西洋ナシは相当古くから栽培が行われていたと思われ、紀元前 300年頃の哲学者テオフラトスはナシの老齢樹が豊産なことや、野生種と栽培種との区別、実生繁殖と接木繁殖の相違について記述しており、このことからも、西洋ナシの栽培は古くから行われていたことがわかります。
  •  ローマ帝国の栄えた時代(43〜407年頃)には、ギリシアよりイタリア西部や中部以北に西洋ナシ栽培が広まったとされます。
  •  正確な年代は不明ですが、ギリシアからフランスへ西洋ナシ栽培が伝わり、1540年頃には16品種栽培されており、1730年頃フランスからベルギーへ西洋ナシ栽培が伝わりました。
  •  イギリスも古くから西洋ナシの栽培が行われていて、1629年には65品種の西洋ナシが記載されており、そのイギリスからアメリカへ伝わり、1630年頃から栽培が始まったとされ、さらに果樹園の栽培が軌道にのったのは、1730年頃からとされます。 

   日本の西洋ナシの歴史


  •  明治初年頃に、アメリカ・フランスから政府が西洋ナシを輸入し三田育種場において苗木を養成し、明治10年(1878年)頃から各府県に配布しましたが、栽培条件や栽培法が日本梨と違っていることなどで広まなかったようです。 明治40年(1907年)頃の関西地方(愛知・兵庫・岡山など)では、輸出用果実としての栽培が盛んに行われていましたが、貿易関係の失敗から輸出は不可能となり栽培も衰退してしまいました。 それでも現在、岡山県などに一部の西洋ナシの品種が残存しています。
  •  その後、東北地方(山形・秋田・福島)や長野県など栽培条件が適しているため、西洋ナシの産地となりました。
  •   西洋ナシの栽培の歴史  渡部俊三 参考